法律相談事例
離婚時に退職金は財産分与の対象になるか?
【設問】
二人の子どもが社会人になり、これを契機に夫との離婚を検討しています。長年我慢してきましたが、夫の身勝手な行動、そして暴言に耐えきれなくなりました。
しかし、一つ問題があります。
これまで教育費に手一杯だったこともあり、自身の貯蓄がほとんどないのです。
当ては、自宅(住宅ローン未完済、夫名義)と夫の退職金ですが、現在56歳の夫は定年までに時間があります。
この場合、退職金の一部を私が受け取ることは可能なのでしょうか。
また、自宅については夫名義ではあるものの、購入時に私の実家が500万円の資金援助をしています。このことで何か考慮されることはありますか。
【回答】
1.財産分与の対象になる財産
離婚時の財産分与についてのご質問です。財産分与で対象となるのは、婚姻生活中に夫婦が協力して作った財産(これを「夫婦共有財産」と言います)とされています。この時、財産の名義は関係がありません。
ただし、各個人が親などから相続したもの、あるいは贈与されたもの、そして結婚前に各々が蓄えていた財産については、その対象になりません(これらを個々人の「特有財産」と言います)。
今回の場合、自宅を購入した際に質問者の方のご両親から援助があったとのことですから、この500万円分については、質問者の方の「特有財産」となります。
2.財産分与の計算方法
夫婦共有財産については、夫婦で全財産の2分の1ずつを均等に分け合うのが基本です。
夫婦の収入の差が大きい場合、あるいは片方が主婦(夫)で収入がない場合であっても同様です。
3.債務の取り扱い
この原則は住宅ローン、借入金といった債務についても同様で、やはり2分の1ずつ負担していくこととなります。
もちろん、個人的に作った借金、例えばパチンコや競馬などによる債務については、個人的な債務として考慮されます。
4.退職金の扱い
通常、退職金は財産分与の対象になりますが、退職前の離婚となった場合、全額が対象になるとは限りません。
対象になる金額は、結婚生活の期間によって決まってくるのです。
今回のケースでは旦那様はまだ退職されていないということですが、定年まではまだかなりの期間がありますね。
そもそも退職金の支給自体が未確定事項のため、財産分与の対象にならない可能性が高いです。もし財産分与の対象としたいのであれば今少し待つしかありません。定年まで5年以内程度が目安です。
それでは、例えば定年前に退職金が財産分与の対象となった場合、その支払いはどうなるのでしょうか。
離婚時に十分な貯蓄があれば支払いができるかもしれませんが、前払いすることは難しいというケースもあります。
この場合、退職時に支払うという取り決めを交わすこととなります。
なお、退職金のみが財産分与の対象であるといった場合には、あえて離婚時に財産分与の手続きをせず、退職間際に財産分与を行う方法もあります。ただし、離婚が成立してから2年以内という期限もつきますし、あまりお勧めはいたしません。