法律相談事例
従姉の死後に相続人がいない場合(相続問題)
【設問】
私には幼い頃から家族ぐるみで非常に親しくしてきた従姉がいます。
その従姉はしばらく入院をしており、私が世話をしていたのですが、先日老衰のため亡くなりました。
本人の死去により口座が凍結したため、入院時の医療費や葬儀の費用は、私が支払いました。とはいえ、従姉にお金がなかったわけではありません。両親から相続した不動産もありましたし、生前に蓄えていた株式や預金もあるようで、遺産は相当の額になるかと思います。
しかし、その従姉は一人っ子でしたし、子どももいません。両親はもちろん他界していて、遺言書も残されておらず、法定相続人がいない状態なのです。少なくとも、私が負担した医療費や葬儀費用だけでも、従姉の遺産から支払ってほしいと思うのですが、どうすればよいのかわかりません。今後、従姉の遺産はどうなるのでしょうか。
【回答】
亡くなった方に、相続人も遺言書もないという今回のケースでは、家庭裁判所への申立が必要になります。
従姉の方が亡くなった際の住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続財産管理人」の選定を要請して下さい。
裁判所によって指定された相続財産管理人が、従姉の方の遺産の管理や清算を取り持つことになります。最終的には、遺産を国庫に帰属させる役目も負います。
したがって、今回あなたが支払った医療費や葬儀費用は、この相続財産管理人に請求することになります。その事実が認められれば、費用を支払ってもらえますよ。
もう一つ、あなたは民法上の「特別縁故者」に当たるかもしれませんので、お伝えしておきます。
特別縁故者とは、民法958条の3第一項にある「被相続人と特別の縁故があった者」のことですが、具体的には、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者と定められています。
幼い頃から従姉の方と付き合いがあり、晩年の世話も懸命になさっていたようですから、あなたが特別縁故者に該当する可能性は大いにあります。
もし特別縁故者と認められれば、相続財産の全部または一部を受け取れる可能性も出てきます。
そのためには家庭裁判所への申立が必要となるのですが、この申立ができるのは相続財産管理人の選任後になります。
相続財産管理人が選定された後、家庭裁判所は「相続人捜索の公告」を行い、そこで相続人に相当する人物が見つからなければ、特別縁故者に対する財産分与が行われる、という流れです。
財産分与の申立の期間は相続人捜索の公告の期間満了の翌日から3ヶ月以内に限られ、申立先の家庭裁判所は相続財産管理人を選定した家庭裁判所となりますので、注意してください。