法律相談事例
友人に貸したお金を返してほしい(法律相談:債権回収問題)
【質問】
友人のAさんが10年前に貸したお金を一向に返してくれません。当初は1年後に返すという約束で貸したお金でしたが、こちらからの再三の請求にも応じず、10年間1円も返してくれてはいません。しかも最近はその100万円を「もらったものだ」とまで言うのです。全くお金を返すつもりのないAさんから、貸したお金を回収するためには、どうすればよいのでしょうか。
【回答】
1.今回のテーマは「債権回収」
「債権」という言葉をご存知でしょうか。今回のようにお金を返してほしい、お金を払ってほしい、といった要求をする権利のことです。この権利をもってお金を回収することを一般的に「債権回収」といい、これが今回のゴール地点となります。
2.まずはAさんの資力が問題になる
今回のケースでまず確かめなければならないのは、Aさんの懐事情です。
Aさんはお金がなければ100万円を支払うことができませんから、今回のゴールである債権回収も不可能になってしまいます。債権回収は相手の資力次第なのです。質問者の方はAさんの資力を把握していらっしゃるでしょうか。
仕事の給与、持っている車や住んでいる家はどうでしょうか。まずは様々な観点から、Aさんに100万円を返す資力があるのかを判断する必要があります。
3.時効は大丈夫?
Aさんに借金を返す能力があると判断できたら、債権が時効消滅していないかを確かめましょう。これも非常に重要な確認事項です。時効期間が過ぎていると、相手が債権を消滅させることも可能になってしまうからです。
今回のケースでは一刻も早い確認をお勧めします。というのも、現行の民法において債権の消滅時効期間は10年と定められているためです。ただし「弁済期」というものを10年前に決めていた場合は、少し事情が変わってくるのですが。
もし、時効がすぐに迫っているという場合は、時効を中断するための手続きをただちに踏まなければなりません。このように対応も変わってきますから、出来るだけ早く時効を確認してください。
4.借用書は作ったか?
借金に関する訴訟では、お金を貸した側にその事実を立証する必要があります。ここで重要な証拠としての役割を果たすのが「借用書」です。先ほど挙げた「弁済期」をはじめ、お金を貸した日付や当事者、その金額といったものを証明するものです。署名捺印をしてあればベストですが、そうでない場合も一応証拠とはなります。また借用書がない場合、当時の日記や手帳といったものも、十分な証拠となる場合がありますので、探してみましょう。もし、これからお金を貸し借りするという場合には、署名捺印のある借用書を作成しておくように心がけてください。その後の紛争を防ぐためにも、非常に有用となるからです。
5.今回のようなケースでの方針
さて、以上のような項目を確認したうえで、まずは「催告」という手続きに入ることになります。催告にも従わないのであれば、「訴訟」です。以下、詳しく見てみましょう。
催告は「内容証明郵便」で行います。この催告は、時効を中断させる手段としても有効です。郵便の送付から6ヶ月以内に訴訟を起こせば、時効が完成しないからです。ただし、内容証明郵便が相手方に届かなかった場合には時効完成を妨げることはできないので注意が必要です。
そのため、時効が迫っているという場合であれば、早めに内容証明郵便による催告を行うことが望まれます。また、相手に書面が到達したことが確認できますし、書面の内容を立証する証拠として残すこともできますので、時効が迫っていないという場合でも行うのがよいでしょう。
この催告を受けても、相手の反応がない場合には訴訟を起こすほかありません。その場合は、ご自身の主張と、それを立証するものを用意する必要があります。先の借用書しかり、当時の日記や手帳など、証拠となるものを整理しましょう。
とはいえ、ご自身で訴訟に臨むのはかなりの負担を覚悟しなければなりません。ですから、弁護士に相談してみるのが最も確実かと思われます。弁護士の助けを得られれば、訴訟前に「支払督促」や「簡易裁判所での調停」を行うなどの選択肢も増えてきます。また、仮処分によって相手方の財産を保全したり、訴訟の判決を受けての強制執行を行ったりといった場面でも、大きな助けとなります。