法律相談事例
ホームページ製作ソフトの訪問販売
消費者問題
私は、個人でデザイン業を営んでいます。ある日、業者が突然押し掛けてきて、『インターネットのホームページを利用して広告を出せば、確実に儲かる。』『ホームページで広告を出さないなんて時代遅れだ。』などと長時間話をされました。
私は、仕事にインターネットが必要であると感じたことがなかったことから、最初はお断りしていたのですが、営業の人にあまりにも長時間居座られたため、だんだん面倒くさくなって、ホームページの作成ソフトを割賦で購入してしまいました。
しかし、よくよく考えると、私が仕事をするうえでインターネットのホームページを利用する必要がなく、納得ができません。
今回ご相談のケースは、訪問販売が問題となっています。訪問販売については、特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)によって規制がなされており、特商法9条には、いわゆるクーリングオフが規定されています。パソコンのソフトについても、クーリングオフの対象となり得ますので、ご相談のケースも契約書面等を受け取ったときから8日以内であれば、クーリングオフができそうです。
しかし、今回ご相談のケースはそう簡単には解決することが出来ません。特商法26条1項1号には「売買契約…で、…購入者…が営業のために…締結するものに係る販売」は、訪問販売に規制に係る条文は「適用しない」と規定されています。そうすると、今回ご相談のケースでは、クーリングオフが出来ないこととなってしまいます。たぶん、ご本人で販売業者に連絡すると「あなたは個人で営業しているのであるから、クーリングオフはできませんよ。」と言われてしまうと思います。
だからといって、弁護士に相談せずに諦めるのは時期尚早です。今回のご相談のケースでは、販売業者の営業担当者は、「確実に儲かる。」などと発言したり、断っているにもかかわらず長時間ご自宅に居座ったり、契約締結の過程に問題がありそうです。また、ご相談の方は、お仕事にインターネットは不要である旨お話されています。
そうであると、押し掛けてきた時間やそのときの営業担当者の態度や人数等によっては、民法96条1項の強迫に該当するかもしれませんし、詐欺に該当する可能性もなくはありません。もし、強迫や詐欺に該当すれば、契約と取り消すことが可能です(民法の規定は、「営業のために」行われたかどうかは関係ありません。)。また、特商法26条1項の規定については、仮に購入者が事業者であったとしても、購入者の仕事との関連性や必要性が極めて低い場合には、特商法26条1項が適用されないので、クーリングオフをすることができる旨の高等裁判所の判決もあります(名古屋高裁平成19年11月19日判決参照)。
結論として、ご相談のケースが、民法の強迫や詐欺に該当する可能性があるか、あるいは、上記の判決例のようにクーリングオフが認められる可能性があるかは、事情を更にお聞きしないとわかりません。ですが、販売業者から「クーリングオフが出来ません。」と言われたことを鵜呑みにして、簡単に諦める必要はありません。
ご相談のケースと類似した事案でお困りの方は、是非一度、法律相談に行かれるとよいと思います。